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真冬のアララト山 [旅のこと]

26歳の冬、イランの首都テヘランの中央バスターミナルから、トルコの黒海沿岸の町トラブゾン行のバスに乗った。
その当時はイランイラク戦争の最中で、イランの国内でも検問が頻繁にあったし、イスファハーンに泊まっていたときには、実際すぐ近くに爆弾が落とされ、ホテルの窓ガラスがピシピシピシピシと割れんばかりの音をたててしなった。
イラン国内はそんな状態だったから、午後に出発したバスは、夜になってからところどころでヘッドライトを消してスピードを落として走ったりした。そんな状態だったから、国境に着いたのは真夜中を廻っていた。
明け方までの数時間、エンジンをかけ暖房を効かせたバスの中で待たされ、そして、夜明け直前にバスから降ろされた。
イミグレーションは少し小高いところにあり、そのせいもあってか待合室は底冷えがしていた。
遠くの空が白むのが薄い窓ガラスを通して見えた。眼下に雑木林かと思える黒い何かが広がり、そのはるか向こうに音を立てずに朝が近づいてくる。
少し様子がわかるようになると、雪をかぶった山があった。
アララト山。
地図で見ていたからそうだとわかったのだが、晴れ渡った冬の静謐とした空気の中に遠くひっそりとたたずむ。ゆったりと裾野を広げた白い単独峰。
冬の張り詰めた空気の中であくまでも凜として、高貴でさえあった。

しばらく眺めていたが、出入国の手続きが始まった。
私はアララト山にお別れを言った。







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